【坐禅作法22】創造のその先
ちょっとはマシな坐禅作法 創造のその先〜才能とは何か9〜
〜才能とは何か9〜
人生の29年周期
まず各29年の経緯は12+12+5の3つの時期に分けられる。
ボクらはこのセットを何度も繰り返しているだけなのだ。
『人生の29年周期』
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図:布施仁悟(著作権フリー)
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絶えず意識変革を促す出来事に遭遇するのが最初の12年。萌芽期と名づけてみた。
人生に起こる出来事にどう対処すべきか。その型を学ぶ最も大切な時期である。
この間の心の選択に従って善悪いずれかの果実の花芽をつけることになる。
だから萌芽期を過ぎた直後の13、42、71歳。ここで運命の明暗がはっきり分かれる。
13歳は中学校に入学する時期だから誰でも思い出があるのではないだろうか。
さほど差のなかった小学生の頃の個性はここで突然花開いたはずである。
たとえば悪っぽいヤツはより悪く、暗いヤツはより暗く…という具合に。
どうして中学校に進学した途端に激変するヤツがいたのかずっと疑問だったけれど、
どうやら運命のイタズラだったんだね、アレは。
それで次の12年間は成熟期。開いた花が萎んで今度は果実を育てる時期となる。
この時期は可もなく不可もなく。運勢の浮き沈みを体験するでもないけれど、
次の収穫期にどんな果実になるのかはこの時期の選択次第だから怖ろしい。
油断すると収穫期に入る25、54、83歳でロクでもないことになる。
たとえば2011年。どういうわけか54歳で首相に選出された男がいた。
消費税増税前にやるべきことがあると言っておきながら何もせずに増税決定。
原発存廃論議冷めやらぬうちに海外で原発推進演説をしたりする二枚舌男だ。
あるいは喉の奥に三枚から四枚くらい隠していたのかもしれない…。
されど首相は辛口コメンテイターも舌をまくほどの演説上手ときていた。
「あんなに何枚も舌を使っておいてよく舌がまわるもんだ」と思っていたら、
翌年には国会答弁でロレツが回らなくなってきた。そうして限界を感じた男は、
自ら先導した解散総選挙で大敗を喫し墓穴を掘ることになる。
その男は解散総選挙時のテレビCMで「私は決断をした」と連呼した。
「2030年までに原発全廃」を謳いながら新規の原発建設の中止は“決断”せず、
消費税増税決定をもって“決断”と言ってのけるセンスにはホトホト呆れる。
凡人は“問題の先送り”と“英断”の違いも区別できないようだ。
もちろん25、54、83歳で転ぶ人ばかりではない。
萌芽期と成熟期に“問題の先送り”をせずに“英断”をしてきた人にとって、
そこからは美味しい収穫期にはいる。
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大器晩成型の天才
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『モナ・リザ』
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レオ様は典型的な大器晩成型の天才。
でも晩年はコケたから未完の大器なのだ。
モナ・リザの左手も未完なんだって。
54歳頃の作品。
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図:ウィキペディアより。
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万能の天才と呼ばれるイタリアルネサンス期の巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチ。
レオ様が収穫期に入った54歳頃の作品が有名な『モナ・リザ』である。
生涯最高の傑作や世紀の発明・発見はこの収穫期に生まれやすい。
29歳からの一周期を例に挙げれば収穫期は54から58歳までになるけれど、
典型的な大器晩成型の天才はこの時期に生涯最高の傑作を生み出す傾向にある。
たとえば尾形光琳の生涯最高傑作もこの時期の作品だ。
『紅白梅図屏風(白梅図)』
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尾形光琳もまた典型的な大器晩成型の天才。
59歳で亡くなる少し前の集大成的な作品。
それが『紅白梅図屏風』。
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図:ウィキペディアより。
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江戸初期に活躍した天才絵師・尾形光琳は富裕な商人の家に生まれた。
ところが上層階級相手の高級呉服商であったため商売は得意客次第。
薄利多売の商人の台頭の中で最大の顧客も亡くなり30歳から行き詰る。
経済的苦境を転機として自活の道を絵師に定めたのが35歳。光琳を名乗った。
社交的な性格が幸いして懇意にしてもらっていた西本願寺の依頼にも恵まれ、
早くも44歳で絵師に与えられる称号・法橋(ほっきょう)に叙せられた。
この頃の作品が代表作のひとつ『燕子花(かきつばた)図屏風』である。
『燕子花図屏風』
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萌芽期卒業時における開花宣言。
尾形光琳の場合。
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図:ウィキペディアより。
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つまりこれは萌芽期卒業時における才能の開花宣言みたいなものだ。
天才の傑作は開花宣言の一点と収穫期における一点を合わせて通常二点ある。
北斎なら『富嶽三十六景』と『信州小布施、上町祭屋台天井絵』。
フランク・ロイド・ライトなら『落水荘』と『マリン郡庁舎』という感じ。
レオナルド・ダ・ヴインチなら『モナ・リザ』とこれ。
『最後の晩餐』
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萌芽期卒業時における開花宣言。
レオナルド・ダ・ヴィンチの場合。
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図:ウィキペディアより。
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『最後の晩餐』はレオさま42歳の作品だ。
そして収穫期の傑作を生み出した後はほとんどのケースでまもなく他界する。
たとえば北斎、ライトは90と91歳。尾形光琳は59歳。レオさまは66歳だ。
つまり次の周期に入ったあと萌芽期のどこかで亡くなってしまったことになる。
果たしてそれが天才の宿命なのだろうか?
たしかに“夭折の天才”は人生最初の収穫期25〜29歳に絶頂期を迎え、
30代に入った途端にあっけなく死んでいく早熟型の運命をたどっている。
次はそんな早熟型の天才たちを29年周期説に当てはめてみよう。
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早熟型の天才
とはいえ「早熟型の天才なら誰でも早死に」ということでもないようだ。
たとえば人生最初の収穫期でまず思い浮かぶのは物理学の奇跡の年。
26歳のアインシュタインが“特殊相対性理論”を発表した1905年だ。
けれどもアインシュタインは76歳まで長生きしたから“夭折の天才”ではない。
同じ物理学の分野では25歳頃に万有引力を発見したニュートンもいるけれど、
彼もまた84歳までの長生きである。
ただし神の摂理を知るために宇宙の法則を探っていたアインシュタインや
聖書研究に没頭した経歴のあるアイザック・ニュートンは超然としている。
もっと普通のちょいとお茶目で運命に見放されるようなおっちょこちょい。
きっとそういうヤツが“夭折の天才”である。
もちろん29年周期説は普遍の法則であるからそんな天才を見つけるのは簡単だ。
アマデウス・モーツァルトとラファエロ・サンティなら証明に過不足はないだろう。
ボクには彼らのすべての作品が傑作にみえるので代表作はあえて挙げない。
まずヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの最盛期は29歳前後。
オペラ『フィガロの結婚』『ドン・ジョヴァンニ』の大成功した時期で、
29年周期説でいえば、ちょうど“人生のテーマ”の変わる節目に当たる。
どうやら彼らのような天才は凡人に比べて課せられる試練が重いようだ。
“人生のテーマ”の変化に気づかずに素行の悪いまま過ごしたモーツァルトは
すぐにお金の工面に奔走するようになり早々35歳で亡くなってしまう。
今では創造的才能のない音楽家でもモーツァルトの楽曲で世過ぎできるのに、
作曲した本人は借金苦だったというから不思議な話ではある。
お次はイタリアルネサンス三巨匠の一人・ラファエロ=サンティ。
世間一般に代表作といわれる『アテナイの学堂』もまた29歳頃の作品である。
あるイギリスの画家によればラファエロは礼節、美徳、威厳ある人格で美男子。
一見すると非の打ち所のない天才のはずだけれど死因は過度のセックス。
性交が原因の高熱により37歳で死んだ。この天才君はほんとにお茶目でかわいい。
こんな感じで思い当たるところを調べていくと面白い統計を発見した。
どうやらほとんどの秀才・天才の超えられない壁が38歳にあるようなのだ。
芥川龍之介35。国木田独歩36。宮沢賢治37。太宰治38歳。
トゥルーズ・ロートレック36。フィンセント・ファン・ゴッホ37歳。
とくに38歳で亡くなったフェリックス・メンデルスゾーンの死因は意味不明。
姉の死報に接して悲嘆の余りに起こした神経障害なんだとか。
果たしてそんなことであっさり死ねるもんかね?
そこでボクはこう考えた。
運勢のクロスポイントのある38歳はそれまでの人生を総括・清算する年齢である。
それまでに“ぷっつん”しなかった凡人は“凡人のレール”をそのままゆくしかない。
一方、凡人から脱皮した秀才・天才として創造性発現の頂点に達していたら、
後はレールを乗り換えてステップアップするより外に人生の道はないはずだ。
にもかかわらず新しい周期に入ったことに気づかずに意識変革を怠った場合、
クロスポイントのある38歳までに死を迎えるのではないか。
どうやらステップアップの合否は29から38歳までの9年間に決められる。
9年目の38歳というのはその審判のリミット。“最後の審判”を受ける歳なのだ。
つまり天才の夭折は宿命ではなく心の選択の問題だったらしい。
そういう意味では葛飾北斎、ライト、尾形光琳、ダ・ヴィンチ。
彼らもまたおっちょこちょい。“夭折の天才”だったのである。
この時点で次に調査するべき人物が必然的に決まってきた。
おそらく彼は収穫を終えたあとの萌芽期を突き抜けた天才のはずだ。
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天才の試練
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『ピエタ』
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君子発見!
彼は間違いなくルネサンス最大の天才だ。
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図:ウィキペディアより。
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ルネサンス三巨匠の一人ミケランジェロが人生最初の収穫期に残した傑作は二点。
それぞれ26歳と29歳の彫刻作品『ピエタ』と『ダヴィデ像』である。
この二点なら秀才・天才段階の頂点に達した証拠と判断してよさそうだ。
「神のごときミケランジェロ」
そんな名声を得た30代のミケさまに与えられた萌芽期の試練が『天地創造』。
これはちょうど33から37歳の間の4年間に描きあげられたフレスコ画である。
フレスコ画というのはまず漆喰を塗ってそれが乾き切らないうちに絵の具をのせる。
スピードと技術を要求されるから画家にとっては腕の見せどころなのだけれど、
彫刻家を自負していたミケさまはローマ教皇の命で無理やり描かされた。
しかも『天地創造』はバチカンにあるシスティーナ礼拝堂の天井画。
ずっと空を仰いだ状態で絵の具の雨が滴り落ちてくる中での作業となる。
幽閉状態のミケさまはほとんど一人でその作業を完結させたそうだ。
その最中に友人ジョヴァンニへ宛てた手紙にはこう記してある。
いまや死したるわが絵 わが名誉
ジョヴァンニ 助けにきておくれ
われは良きところにあらず 画家ともいえぬ
ローマ教皇から画家として扱われていることに懊悩していたらしい。
このシスティーナの天井画は柱の彫刻に見える部分も実はミケさまの画。
おそらくこれは暴君・ローマ教皇に対する声なき反抗なのである。
こうした萌芽期の試練の中で生み出される傑作はどれもシュールでボク好みだ。
たとえば吉本ばななの『体は全部知っている』のように、
萌芽期の試練を体験している人が精神の浄化過程で生みだす傑作がある。
それは世間一般の凡人にはわかりづらいけれどワカる人にはワカる作品。
なぜなら同じ体験をしていればこそ理解できる世界観が広がっているからだ。
真実のシュールレアリスト・サルヴァドール=ダリ30代の作品群もそう。
いわば萌芽期の試練の中で生まれる作品こそがシュールレアリズムなのだ。
だからギリシア彫刻のような古典芸術にもシュールな作品はもちろんある。
中身の伴なわない現代アートに比べたら古典芸術の方がはるかに前衛的だ。
この萌芽期の試練は次のステップに進むために欠かせない通過儀礼。
「35歳から芽生えてくる才能を自分はどう活かすつもりなのか?」
その答えを独力で探り当て創造的結果を運命に提出しなければならない。
そのリミットが“9年目の審判の歳”。すなわち9歳、38歳、67歳だ。
とくにミケさまは次の萌芽期にもシュールな名品を残す離れ業をやってのける。
それは『天地創造』を描いたバチカン・システィーナでの再度の挑戦だった。
依頼主はまたもやローマ教皇。一周期巡って61歳からの二度目の対決である。
その名作のタイトルはシスティーナ礼拝堂壁画『最後の審判』。
しかしタイトルは『最後の審判』でも描かれているものは違う気がしてならない。
左下の墓場から死者の魂が肉体を持って甦り、左上の天国へと昇ってゆく。
されどほとんどの魂はぐるりと時計回りに右下の地獄へ落ちるのみ。
画面中央のイエスとマリアは運命の審判を下す神の象徴である。
またボクらは萌芽期に意識変革をせずに9年目の“最後の審判”を受け続けたら、
そのまま同じ段階を29年周期で繰り返す。途中で死んでも同じこと。
ステップアップできるまで何度でも生まれ変わってくる。これが輪廻転生だ。
人生最初の収穫期に傑作を生み出す秀才・天才たちはその証拠に他ならない。
秀才・天才の段階にステップアップしたところから人生を始めているからだ。
また大器晩成型の天才の生涯はステップアップの実例といえるだろう。
だからボクは『最後の審判』を観れば観るほど『輪廻転生』にみえてくる。
輪廻説を早々に放棄したカトリックの総本山・バチカンに『輪廻転生』だなんて、
ミケランジェロの『最後の審判』はシュールかつ痛快な作品だとボクは思う。
また画の中にミケランジェロの自画像らしきものがある。
そのミケさまは抜け殻の皮だけになって描かれているのだけれど、
これは秀才・天才段階の輪廻を抜け出したという勝利宣言なのかもしれない。
その証拠に『最後の審判』にはこんなエピローグがついている。
制作当初の登場人物は全員性器まるだしの肉体の競艶(きょうえん)だった。
もちろん修正を命じてきたローマ教皇にミケ様はこんな言葉で一矢報いる。
「修正してほしければ、ローマ教皇、まずは世の中をなおしてみせろ」
ブラボー!ミケランジェロ・ブオナローティ。因縁の対決の勝利者は君だ。
ミケさまがこの作品を完成させたのは生涯最後の萌芽期66歳のこと。 それは、
9年目の審判の前年のことで傑作の生まれる時期にはちゃんと意味があるようだ。
『傑作の生まれる三つの時期』
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図:布施仁悟(著作権フリー)
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さて、次なる問題は秀才・天才段階の輪廻を抜け出した後のことである。
ミケランジェロや植芝盛平はどんな段階に突入していったのか?
ボクはその段階に足を踏み入れたことはないから明確にはわからない。
けれどおそらくインドのカースト制度がその謎を解く鍵ではないだろうか。
(2012.11)
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